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木は、手のしたことを覚えている。刃を入れ損なえば、貼り直しはきかない。だから彫り手は、最初の一刀の前に木目を読みます。木目が決めることは、思うよりずっと多い。
東京の西、箱根の秘密箱には、見える蓋がありません。板を数ミリずつ決まった順に滑らせて、はじめて引き出しが抜ける。四回で開くものもあれば、何十回もかかるものもあります。
表を覆うのは寄木。色の違う木の棒を貼り合わせて塊にし、その端から紙のように薄く削り出したもので、絵の具は使いません。色は、木そのものの色です。
一九二二年、北海道の八雲で農場を営んでいた徳川義親は、スイスのベルンで、農家が冬に彫って売る熊を見ました。いくつか持ち帰り、農場の人々に彫ってみるよう勧めた。最初の熊が並んだのは一九二四年のことです。
鮭をくわえた熊は、やがて誰もが知る姿になりました。毛並みはひと彫りずつ鑿で刻む。畑に出られない月々の仕事でした。
こけしは、東北の温泉町から生まれました。宿の椀や盆を挽いていた木地師が、子どもや湯治客のために素朴な人形を挽くようになったのが始まりです。
町ごとに形と顔が受け継がれ、見慣れた人なら部屋の向こうからでも産地が分かる。鳴子のこけしは首がきつく差し込まれていて、回すとキュッと鳴ります。

一木、継ぎなし。木目を読みちがえれば、その日は終わり。










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