Maison Homura
地方から

真ん中と雪の海側

中部・北陸 · Chūbu · Hokuriku
富山・石川・福井と山の県

将軍に次ぐ米を持つ大名が一人。それを四百年、職人に払い続けた。

真ん中と雪の海側
この家のために描いたもの。土地とその仕事であって、ある一つの場所の記録ではない。
この地方のこと

前田家は加賀を治めた。徳川に次ぐ大身である。それだけの米を背にした家は、金箔師も塗師も染師も鋳物師も、代々召し抱えることができた。実際にそうした。

だから金沢はいまも金箔を打ち、九谷を焼き、加賀友禅を染め、この人形を作る。一時間離れた高岡は一六〇九年から銅を流している。前田が鋳物師を呼び、町ごと与えた。

内陸はまた違う。井波は寺の彫刻を彫り、飛騨は独自の指物を守る。雪は北海道を除けば国内で最も重い。冬の理屈は同じである。長い屋内の月日と、辛抱が報われる仕事。

長い話

負けねばならぬ獅子

富山の村では、秋祭りは喧嘩である。長い布の下に二人、両腕でなければ持てぬ重さの彫りの頭——獅子が村を練り、天狗の面をつけた少年が棒でかかっていく。舞は長く、そして獅子が負ける。負けねばならない。獅子はその年の病と厄であり、棒を持った子ども一人でそれを追い出せるということが、祭りの眼目だからである。

村の背後には、それ自体が神である山が二つ立つ。白山は年の大半を白く、社が置かれるはるか前から麓から拝まれてきた。立山は地獄と浄土の地形として描かれ、僧はその絵図を担いで諸国を回り、谷ごとにどの地獄かを説き、免れる代を集めた。

祭りと祭りのあいだ、獅子頭は家に掛かっている。飾りではない。一度打ち負かされ、来年また打ち負かさねばならないものの、顔である。

最も富んだ藩が、何を買ったか

加賀前田家は百万石を領した。徳川本家を除けば日本のどの家よりも多い。将軍が見ているところで持つには危うい量であり、前田はそれを解っていた。だから文化に使った。金箔、漆、染め、能、学問。軍備は脅威と読まれる。絵師の一派は無害と読まれる。四百年後の今も、日本で使われる金箔のほとんどを金沢が打っている。

一六〇九年、前田利長は高岡に城を築き、鋳物師七人を城下に呼んだ。六年後、幕府は城の廃止を命じる。町は死ぬはずだった。ところが町は鋳物師を手放さず、鍋釜から寺の梵鐘へ移り、いまでは国内の銅器のほとんどをここで吹いている。

井波の彫刻は事故のようにして生まれた。瑞泉寺は幾度も焼けており、一七六三年、再建のため京の本願寺から大工が下ってきた。彼らは工事のあいだ土地の男たちに彫りを教えた。大工は帰った。彫りは残った。

雪は忍耐の一種である

この海側の雪は、北海道を除けば国内で最も重い。山あいの集落では雪が滑り落ちるよう屋根を六十度に立て、その下の小屋裏を使った。上では蚕を飼い、そして床下の土から掻き取った硝石を、加賀藩へ火薬として、静かに納めた。

家の中で過ごす月日は、急ぐ者なら手を出さない仕事を育てる。九谷は二度描く。黒褐色で骨描きし、釉の上から五彩を差し、金を置き、もう一度焼く。輪島の塗りは古くから百を超える工程と数えられ、その一つずつに乾かす時間がつく。つまり仕事の大半は待つことである。

木彫にも同じ理屈がある。井波の欄間は一枚の板から彫り、向こうまで透かし、両面とも仕上げる。欄間は二つの部屋のあいだの壁に嵌まり、どちらの部屋にも表を見る権利があるからである。

この地方の所蔵品 · 9点
九谷焼
九谷焼

九谷焼

石川県加賀 · 上絵付、五彩

偶然にゆだねたところは、ひとつもありません。髭の一本まで。

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常滑焼
常滑焼

常滑焼

愛知県常滑市 · 六古窯のうち最も大きい窯

内側に釉がありません。手抜きではなく、それが要です。

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獅子頭
獅子頭

獅子頭

富山県南砺市井波 · 獅子舞は七世紀の記録から

人の頭を噛みます。噛まれるほうが、良いのです。

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加賀人形
加賀人形

加賀人形

石川県金沢市 · 江戸期から

あの白は絵具ではない。貝を挽いて、十度も重ねた粉である。

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欄間
欄間

欄間

富山県南砺市井波 · 井波の彫刻——明和年間から

二つの部屋が分け合うものだから、両側から彫ります。

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高岡銅器
銅器

高岡銅器

富山県高岡市 · 慶長十四年から

金は宝冠と指の節から薄れます。手が触れるのは、そこだから。

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騎馬武者
騎馬武者

騎馬武者

富山県高岡市 · 五月の飾り

五月に男の子のために買われ、残りの十一か月は箱の中にいる。

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猪

富山県高岡市 · その年のためだけに、十二年に一度

中国の十二支、十二番目は豚。日本の十二支、十二番目はこれです。

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七福神
七福神

七福神

富山県高岡市で鋳る · 室町期に七柱と定まる

一艘の舟に七柱。そのうち日本の神は、一柱だけです。

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この地方の産地
九谷九谷色絵磁器常滑常滑無釉の焼締め井波井波欄間と獅子頭高岡高岡銅器

それぞれ「作り手」の頁に一項ずつある。

この地方が知られていること
手仕事
高岡銅器、九谷焼、金沢箔、井波彫刻、常滑焼
富山湾の寒鰤と蟹、加賀料理、飛騨牛
行くなら
雪の兼六園、高岡の鋳物工房、白川郷
妙な話
日本の梵鐘はほとんど高岡で鋳る。同じ工房が灰皿も作っている