狐と鹿と、小さな土鈴
京には鳥居に覆われた山がある。伏見の稲荷山を、寄進者の名と年号を刻んだ朱の鳥居が千本、隧道のように登ってゆく。神は稲荷、稲を司り、ゆえに育つものすべて——利益も含めて——を司る。使いは狐で、曲がり角ごとに石の狐が座り、その多くが口に鍵をくわえている。蔵の鍵である。
奈良の鹿は観光の偶然ではない。春日の社は東の鹿島から神を迎えて創まり、その神は白い鹿に乗って来たとされる。公園の鹿はその供の末とされ、一六三七年まで一頭殺せば死罪だった。
この家にある土鈴は、社の門前で売られていたものである。社ごとに形が違う。稲荷なら狐、春日なら鹿、猿を使いとする社なら猿。数文で買って家に吊るせば、一年ぶんの参詣の代わりを務めた。








