Maison Homura
地方から

江戸まわり

関東 · Kantō
東京と周囲の六県

一七二〇年にはすでに百万人。その一人ひとりが客だった。

江戸まわり
この家のために描いたもの。土地とその仕事であって、ある一つの場所の記録ではない。
この地方のこと

十八世紀の江戸はおそらく世界最大の都市で、小銭はあるが土地はない人で溢れていた。手仕事の市場はこの条件から生まれる。楽しみのため、縁起のため、祭りのために買い、また買い替えるもの。

関東の手仕事は都市の手仕事である。小さく、早く、縁日で気軽に買える値段で、流行に合わせて変わった。生まれた子への犬張子、正月に買って翌年焼く達磨。

まわりの土地がそれを支えた。益子の土、箱根の木、川沿いの町の紙。益子は百年ほど台所の器の窯であり、誰も美術とは呼ばなかった。

長い話

都市は自前の神を要る

神田明神は東京のまんなかにあり、祭神のひとりに平将門を置く。十世紀に東国で新皇を名乗り、八か国を二か月おさえ、九四〇年に討たれた男である。首は京で晒された。それが自分で東へ飛び帰ったという話になっている。落ちたとされる場所——今の大手町——には今も首塚がある。周りの地価は途方もなく、それでも誰もそこに建てない。

達磨は達磨大師である。壁に向かって九年坐り、脚が萎えた僧。高崎の少林山が配るのは、脚のない、瞳のない丸い赤である。願をかけるとき片目を入れ、叶ったときもう片目を入れる。つまり人形は一年のあいだ家の中で、片目のまま、こちらを見ている。

犬張子が産室に置かれるのは、犬が難なく産むからである。この地方の信心はその形をしている。実際的で、都市的で、取引である。欲しいものがあり、物を買い、こちらの分を果たす。

湿地の百万人

一五九〇年、徳川家康は関東を与えられた。褒賞の形をした左遷であり、都から遠かった。江戸は湿地の漁村である。家康は水を抜き、堀を通し、川筋を替えた。それから一世紀半で、そこは百万を超える人を抱える、世界最大の都市になる。

理由は参勤交代である。日本じゅうの大名が江戸に屋敷を構え、一年おきにそこで暮らすことを義務づけられた。金を持ち、さして用のない家臣が何十万と一つの町に集まり、その上に居座る古い貴族はいない。そこで育った文化は商人と職人のものだった。板本、芝居、その場の気分で買う安くて派手なもの。

そしてよく燃えた。明暦の大火は町の三分の二と、おそらく十万の人を奪い、その後も大火は何十度も起きている。江戸っ子は火事と喧嘩は江戸の華と言った。これから先も必ず起きることに、もう壊されないと決めた人間の言い方である。一代に一度燃える町は、大工と左官と塗師の町になる。そして、永久に保つつもりの物を誰も作らない町になる。

売るために作る

この地方のものは、殿様の茶室のために作られていない。店のために作られている。物を見ればわかる。速く、明るく、陽気で、安いことを少しも恥じていない。

益子が焼き始めたのは一八五三年、東京へ水甕と土瓶を送るためで、それ以上の志はなかった。一九二〇年代に濱田庄司が住みついたのは、まさにその正直さのためである。箱根の寄木は、東海道の峠で足を止める旅人に売るものとして始まった。どちらも街道の商売である。

木目込人形は逆向きに来た。十八世紀、京の賀茂の社人が柳の残り木で像を彫り、溝を切って、装束の裂を溝に押し込んだのが始まりである。江戸がその手法を取り、柳を桐塑に替え、神職の手すさびを一つの生業にした。

この地方の所蔵品 · 7点
達磨
達磨

達磨

群馬・高崎 · 十七世紀に定まった姿

目のないまま届きます。仕上げるのは、あなたです。

この一点について
犬張子
犬張子

犬張子

江戸——東京 · 江戸期からの産の祝い

犬の頭に笊。それは駄洒落で、そして願いです。

この一点について
益子焼
益子焼

益子焼

栃木県益子町 · 嘉永六年から

江戸へ送る安物の台所道具でした。ひとりの陶工がコーンウォールから帰ってくるまでは。

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根付
根付

根付

京・大坂・江戸 · 江戸期——十七〜十九世紀

着物には、ポケットがありません。この道具がある理由は、それだけです。

この一点について
寄木細工
寄木細工

寄木細工

神奈川県箱根・畑宿 · 天保年間から

色を染めたところは一つもありません。色の数だけ、木の種類があります。

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兜飾り
兜飾り

兜飾り

東京・浅草橋 · 端午の節句、江戸期から

中に頭のない兜を、一年に一月だけ出す。

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木目込雛
木目込雛

木目込雛

東京 · 一七三〇年代から

十二単の重ねが幾重にも。そのどこにも縫い目がない。

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この地方の産地
高崎高崎達磨江戸江戸犬張子益子益子民藝の陶器浅草橋浅草橋節句人形・甲冑箱根箱根寄木

それぞれ「作り手」の頁に一項ずつある。

この地方が知られていること
手仕事
江戸張子、高崎だるま、益子焼、箱根寄木細工
蕎麦、握り寿司、天ぷら。三つとも江戸の屋台から始まった
行くなら
陶器市の益子、川越、季節を外した箱根
妙な話
箱根の寄木に染料は一切使わない。文様の色はすべて別の木の地の色である